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人生は芸術だ 2009/10

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第14回 人生は芸術だ  "Life is Art" 

Posted Date:2009/10/20(Tue) 21:21

 

第14回 人生は芸術だ  "Life is Art" 

 

 

 小さい針の音

 

 ある田舎の小学校に一人の青年教師がいた。その青年は真実に小さな子どもたちを教えた。しかし青年は立身出世を夢見て都会に出る決心をする。大好きな先生をよく知る子どもたちは少しづつのお金を持ちより、「私たちをいつまでも忘れないで」との思いを込めて懐中時計を贈る。都会に出た青年は時計の刻む音と子どもたちの姿を思い勉学に励む。時計は一分一秒の狂いもなく正確に時を刻み続けた。

 

 ある時、ふとしたはずみで時計の裏側に小さなへこみを作ってしまう。時を経て青年は成功をおさめ、時計を古道具屋に売ってしまう。以来、身分が変わり、服装が変わり、会社を興し、プラチナの時計を持つようになる。しかし彼の求めた高価な時計は何度買い替えても正確に時を刻むことはなかった。ある日彼はプラチナの時計を取り出し、社員たちへため息交じりに「私の時計はいつも3分程遅れる」と話したところ、「私のなんか7分も遅れますよ」とか「私のものは日止まりがしますよ」などと話す社員が続出、しかしある社員だけが「僕の時計は不思議に一分一秒も狂いません」と答えた。彼は時計裏のへこみを発見し、自分が若かりし頃子どもたちにいただいた、時計との偶然の遭遇に驚く、「君、このプラチナの時計と変えてくれ」と懇願するが、社員は「この時計は私が一生懸命働いて、やっとの思いで露店で求めたもので、私にとってはその日から苦楽を共にしてきました。この時計を売ったり、交換をしたりする事はできませんが、あなたが愛してくださるなら差し上げます」と話す。

 

 家に帰り彼は今ままで忘れていたことが脳裏をかすめ、苦学時代の過去を思いだしてゆく、そしてカチカチと秒を刻む音を聞きながら安らかな眠りに入った。

 

 彼はよれよれの袴をはき、すきま風の吹く寒村の教壇に立っていた。

 熱心に子どもを見守る彼の顔 。 

 「みんな大きくなったら、どんな人になろうと思いますか?」

 「先生、先生」と競いながら上げるかわいい手。

 一人のほほを赤くした女の子が「いい人になります」と答えた。

 「いい人間ってどんな人ですか?」と彼は聞く。

 子どもは躊躇なく笑顔で「世の中のために働く人になります」と答えた。

 子どもの純情さに思わず感動した瞬間に夢から醒めた。

 

   ・・・・・・・私は今まで何をしていたのだ。

  しばらくの間、カチカチと時を刻む時計の音は無邪気な子供の笑い声に聞こえていた。

 

この物語は小川未明童話集と名づけられた新潮文庫発刊の一遍を私なりにまとめたものです。

初版が昭和26年11月発行で私と同齢(58才)である。以来平成13年5月には72版を重ね、多くの人々に読まれ、愛され続けてきた本である。28の短遍からなるこの童話集は、子どもが持つ自然な悲しみ、喜び、楽しみ、怒りを世に訴え、次の世代を継ぐ子どもたちの文化を非常に真面目に考えている点にある。

 

「読書の秋」という

 

読書をする素晴らしさは人間の生き方の事実を知る事ばかりでなく、価値を知る事の重要性を示してくれることにつながる。

 

「愛情を以て見れば、凡てのもの、みなそれぞれに美しい」    小川未明  (1882~1961)

 

 

 

 

 

 

 

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第13回 人生は芸術だ  "Life is Art" 

Posted Date:2009/10/07(Wed) 21:21

 「TRENCH COAT (トレンチコート)」

 

 

 

 陽が落ちる夕方5時、グラウンドには照明を灯す時刻がくる。肌に感じる外気の温度は10日程前の体感とは明らかに違い、本格的な秋の到来を感じさせる。傍らで元気にトレーニングに励む選手達の姿にも長袖のウェアが目立ちはじめ、次のGAMEを待つ選手はもうベンチコートに身を包んでいる。

  この時期を迎えると私はトラディショナルな歴史と深い意味のデティールを併せもつトレンチコートが無性に恋しくなる。

  それは大学4年生の時(1974年11月)だった。関東大学リーグの法大戦が終わり、合宿所に戻る東横線で目にした40才を過ぎた紳士が纏うトレンチコートに目を奪われた。以来40才を過ぎたらトレンチコートを纏う。憧れだった。

 

 

 COATにはステンカラーコート、ダッフルコート、チェスターフィールドコートなど、用途に応じた多くの種類がある。それは本来、防寒や防風、防水を目的とした常に外敵と対峙している機能服だ。なかでもking of COATと呼称されるトレンチコートは多くの変遷を重ねてきた。前身をタイロッケンと名付けられたシンプルなコートは、ボタンがなく袖付けはセットインスリーブ、そしてウェストのベルトを締めるだけの簡易なものだった。

 変革は1880年、トーマス、バーバリーが紡ぐ過程で防水液に浸した糸を60度の斜文で織り上げ、極めて撥水性の高い素材により飛躍的に進歩を遂げた事に端を発する。

 クリミア戦争では英国軍司令官ラグラン将軍の考案による改良を経て(ラグラン袖とは、運動性の確保、肩、腕を負傷した兵士を素早く手当てする際、袖を切り開く作業を簡易にしたスリーブ)大量生産され、遮風性や防水性、そして装備品を備えたデティールは、第1次世界大戦の塹壕戦でも抜群の威力を発揮した(トレンチとは「塹壕」を意味することでも知られている)。そして多数の犠牲を払ったこの戦争は1920年に終結を迎えるが、戦場で証明された優秀な防水性、そして勝者を象徴する装束はたちまち英国民の心をとらえた。

 

 

歴史に裏打ちされたトレンチコートが醸し出す、不変のシルエットは武骨な男の匂いを漂わせている。

 

 

 

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